○出雲市食育のまちづくり条例
(平成17年出雲市条例第409号)
改正
平成18年3月17日条例第40号
平成22年3月24日条例第13号
平成22年6月28日条例第26号
目次

第1章 総則(第1条-第6条)
第2章 推進計画(第7条)
第3章 基本的施策
第1節 健康の増進及び環境の保全(第8条・第9条)
第2節 産業・観光の振興及び交流の促進(第10条・第11条)
第3節 食の教育、学習及び体験(第12条)
第4節 安全で安心な食生活(第13条)
第4章 推進体制(第14条-第21条)
第5章 雑則(第22条)
附則


前文
 21世紀出雲の発展のためには、未来を担う子どもたちの健やかな心身を育むとともに、全ての市民が、生涯を通じて生き生きと暮らすことができるまちづくりを目指すべきである。
 出雲国風土記には、私たちの暮らす出雲の地が、平野、山、川、湖、海等多様で変化に富んだ自然に恵まれ、古代から豊かな自然の幸を享受していた事例が多々描かれている。当時の斐伊川の両岸は、地味が肥沃で五穀、桑、麻もたわわに実る人々の楽園であり、河には、アユ、サケ、マス、イグイ、ウナギ等が泳ぎ回る様子が記され、人々の豊かな食文化を育む姿がうかがえる。
 人は、単に生きるためだけに食する生き物ではない。人は、豊かな食によって、豊かな人間を育て、豊かな文化を育み、豊かな地域を創ることができる。その力を奢らず、自然の恩恵である食物の貴重な生命を食し、そのお陰で自らの生命をつなげていることを理解し、感謝し、そして食を大切に守り育てることが肝要であり、これは日本の食文化そのものであった。
 しかしながら今日、20世紀に世界一の長寿社会を実現してきた我が国は、食料自給率の低下の中で飽食の時代を迎え、我々は、食料資源の浪費、栄養の偏り、肥満や生活習慣病の増加、食物の安全性への不安、不規則な食事、調理に手間をかけたがらない等、食生活のうえで様々な、深刻な問題を抱えており、この出雲においてもその例外ではない。
 こうした食生活をめぐる環境の大きな変化の中で、平成17年6月に食育基本法が制定され、いまこそ我々出雲市民は、全国に先駆けて、知育、徳育及び体育と併せ、いわば食育の大切さについて、あらためて認識を深め、食生活の改善に立ち上がるべきと考える。
 食育を主眼とするまちづくりは、すなわち市民一人ひとりが、子どもから大人まで、自然の恵みである食と食に関わる人々やその活動への感謝の念を深め、楽しく学び実践することによって、市民自らが心身の健康を守り、人生を心豊かに生きる力を育むことを目指すものである。そしてこれによって、食育のまちづくりを総合的に推進する立場から、真に健康で活力のある神話の夢舞台・出雲の創造に貢献せんとするものである。
 このため、出雲市は、出雲の食育のまちづくりの基本理念を明らかにし、子どもから大人まで市民の協働のもと、食育の学習と実践の取組みを、総合的かつ計画的に推進するため、ここに「出雲市食育のまちづくり条例」を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、食育基本法(平成17年法律第63号。以下「基本法」という。)に基づき、食育を主眼とした総合的なまちづくり(以下「食育のまちづくり」という。)の推進に関する市の基本方針を定め、市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、市の施策の基本的事項を定めることにより、子どもから大人まで全ての市民が、健康で活力ある人生を送るための知識を学び実践する21世紀出雲の食育のまちづくりを推進し、もって健康で文化的な市民生活と明るく活力ある地域社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 食 安心安全な食生活及び食材の生産・製造・加工・流通、調理、廃棄、衛生に至る広範な事象をいう。
(2) 食育 市民一人ひとりが、生涯を通じた健全な食生活の実現を目指し、伝統的な食文化を継承し、自然の恵みである食物の生命を食すること並びに食に関わる人々及びその活動に対する感謝の念や理解を深め、食についての知識を楽しく学ぶことにより、市民自らが健康を守り、活力ある人生を生きぬく力を身につけること。
(3) 地産地消 地元で生産された農産物を、地元で消費することをいう。
(4) 事業者 次に掲げる者をいう。
ア 教育関係者等 教育並びに保育、介護その他社会福祉、医療及び保健(以下「教育等」という。)に関する職務に従事する者並びに教育等に関する関係機関及び関係団体
イ 農林漁業者等 農林漁業者及び農林漁業に関する団体
ウ 食品関連事業者等 食品の製造、加工、流通、販売又は食事の提供を行う事業者及びその組織する団体
(基本理念)
第3条 市、市民及び事業者による食育のまちづくりは、次に掲げる基本理念に基づき推進するものとする。
(1) 市民一人ひとりが、食に関する適切な判断を養い、生涯にわたって食を楽しむ心をもって実践することにより、市民の心身の健康増進と豊かな人間性を育むよう取り組むこと。
(2) 食べることは、食物の生命を食することであり、食物をもたらす豊かな自然、食に関わる人々及びその活動に対して感謝の念と理解を深めるとともに、豊かな自然を保全するよう努めること。
(3) 出雲国風土記等に記された豊かな食文化を伝える出雲の歴史、伝統及び生活風土を重んじる中で、地域特性を生かした食生活に配慮し、生産者と消費者の交流を図りながら、本市の地産地消に取り組み、本市の産業振興、観光交流の促進と農山漁村の活性化を推進すること。
(4) 市民が、食育の最も重要な場としての家庭から地域、学校、職場等、あらゆる場所を通じて、食に関する理解を深め、主体的かつ積極的に食に関する様々な学習及び体験活動を実践するよう努めること。
(5) 食育は、知育、徳育及び体育の基礎となるもので、様々な体験を通して食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活が実践できる人間を育てる教育として位置付け、本市のまちづくりに必要な人材を育成するよう努めること。
(6) 食品の安全性を確保することが食生活の基本であり、国、他の地方公共団体及び関係機関と連携して、食生活に関する幅広い情報を積極的に提供するとともに、食に関わる衛生環境の保持に努めること。
(市の責務)
第4条 市は、基本理念に基づき、食育のまちづくりに関する総合的な施策を策定し、国や他の地方公共団体と連携を図りつつ、これを計画的に実施するよう努めるものとする。
2 市は、食育のまちづくりに関する施策の普及啓発に努めるとともに、市民等の理解を得るよう努めるものとする。
3 市は、食育のまちづくりを推進するために、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(市民の責務)
第5条 市民は、基本理念を理解し、家庭、学校、幼稚園、保育所、職場その他の市民生活のあらゆる分野において、自主的かつ積極的に食育のまちづくりに取り組むとともに、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、基本理念を理解し、自主的かつ積極的に事業活動を通じた食育のまちづくりに取り組むとともに、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
第2章 推進計画
(推進計画の策定)
第7条 市(出雲市食育のまちづくり推進会議が設置された場合にあっては、当該推進会議)は、食育のまちづくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本法第18条の規定に基づき、食育のまちづくりに関する推進計画(以下「推進計画」という。)を定めるものとする。
2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 食育のまちづくりの推進に関する施策についての基本方針
(2) 食育のまちづくりの推進の目標に関する事項
(3) 市民及び事業者(以下「市民等」という。)が行う自発的な食育推進活動等の促進に関する事項
(4) 前3号に掲げるもののほか、食育のまちづくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は、推進計画を定めるに当たっては、市民等の意見を反映するよう努めるものとする。
4 市長は、推進計画を定めたときは、これを公表するものとする。
5 前2項の規定は、推進計画の変更について準用する。
第3章 基本的施策
第1節 健康の増進及び環境の保全
(健康の増進)
第8条 市は、基本理念に基づき、市民の健康増進を図るため、次に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 妊産婦、母子、高齢者、成人等の栄養に関する指導、生活習慣病予防に関する指導、食習慣等の食生活改善に関する指導、離乳食及び幼児食に関する指導、過度の肥満及びそう身等に関する指導、乳幼児等の健診、その他食と健康の増進に関わる施策の推進に努めること。
(2) 食と健康の増進に関わる知識の普及啓発の推進に努めること。
(3) 市民等が行う食と健康の増進に関わる活動に対して支援すること。
(4) 保健所、教育機関、医療機関等の関係機関と連携を図り、栄養、衛生、医療、食習慣等食と健康の増進に関する事項の調査研究の推進に努めること。
2 市民等は、基本理念を理解し、次に掲げる活動に努めるものとする。
(1) 自主的に食と健康の増進に関わる知識を学び、これを活かし、又は実践すること。
(2) 市が講じる施策に協力し、及び参画すること。
(環境の保全)
第9条 市は、基本理念に基づき、必要な環境保全を図るため、次に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 農地、山林等の環境、海、河川、湖沼等の水質及び自然の景観を良好に保全するよう取り組むこと。
(2) 前号の取組みを行う市民等の活動に対して支援すること。
(3) 市及び市民等の活動により発生する食品廃棄物の抑制及び再利用等を推進し、循環型社会の実現に努めること。
2 市民等は、基本理念に基づき、必要な環境保全を図るため、次に掲げる施策に努めるものとする。
(1) 自主的に自然環境等の保全及び循環型社会の実現に努めること。
(2) 市の講じる施策に協力し、及び参画すること。
第2節 産業・観光の振興及び交流の促進
(産業の振興)
第10条 市は、基本理念に基づき、食料の生産及び供給を安定的に維持するため、次に掲げる産業振興の施策を講じるものとする。
(1) 市内における地産地消を推進するため、食材の種類、数量及び品質を確保し、本市の食料自給率を高めるとともに、農林水産業の振興及び地域の商工業の活性化に努めること。
(2) 生産者と消費者の農作業体験等の交流等、市民等が実施する活動の支援に努めること。
(3) 事業者との連携を図り、農山漁村の活性化を図る施策の調査研究をするとともに、食に関する産業振興につながる資源の研究開発等に努めること。
2 市及び市民等は、地産地消の推進を図るため、市内で生産し、製造し、又は加工された食材その他製品を消費するよう努めること。
3 農林漁業者等及び食品関連事業者等は、基本理念を理解し、食材を提供する誇りを持って自らの事業の推進及び発展に努めるものとする。
(観光の振興及び交流の促進)
第11条 市は、基本理念に基づき、観光の振興及び交流人口の増大を目指し、次に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 市内の各地域の食文化を活用し、市内外の地域間交流を促進すること。
(2) 食文化を市の観光資源として活用し、その価値を高め、発展させるよう努めること。
2 市民等は、基本理念を理解し、市内外の交流を促進するため、次に掲げる活動に努めるものとする。
(1) もてなしの心を大切にし、市内外の人々との交流を促進すること。
(2) 市内の各地域の食材の特色ある活用及び提供に努めること。
第3節 食の教育、学習及び体験
(教育・学習活動の促進)
第12条 市は、基本理念に基づき、教育の実践を推進するため、次に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 学校、幼稚園、保育所等(以下「学校等」という。)における食育推進の指針作成の支援、食育指導をする専門教職員の配置並びに教職員等への意識の啓発及び理解の増進を図るとともに、給食施設、ランチルーム、調理実習室及び体験農場等、学校等における施設の整備に努めること。
(2) 子どもたちが、地域や学校等において、栄養、健康増進、自然環境の保全、循環型社会の構築、地産地消、地域の伝統食や行事食等の食文化並びに食に関する作法等に関する学習及び体験(以下「食の学習及び体験」という。)に参加できるよう配慮すること。
(3) 全ての市民が、家庭や地域のあらゆる機会を通じて、食の学習及び体験に参画できるよう努めること。
(4) 市民等が実施する食の学習及び体験に関する活動を支援すること。
(5) 食育を指導する人材の育成に努めること。
(6) 学校、他の地方公共団体及び教育関係者等と連携を図り、市及びその周辺地域の食に関する歴史や文化を調査研究し、その成果を公表するよう努めること。
2 市民は、基本理念を理解し、あらゆる機会を通じ、生涯にわたって自らが主体的かつ積極的に食に関する学習等に参画し、また市の施策に協力するよう努めること。
3 事業者は、基本理念を理解し、その事業活動を通じて、食に関する学習等に参画し、また市の施策に協力するよう努めること。
第4節 安全で安心な食生活
(安全で安心な食育のまちづくり)
第13条 市は、基本理念に基づき、安全で安心な食育のまちづくりを推進するため、次に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 国及び他の地方公共団体と連携を図り、市民が適切な食生活の選択ができるよう、食品の安全性、栄養、食習慣、食料の生産、流通及び消費並びに食品廃棄物の発生及び再利用の状況等について調査及び研究を行うとともに、広く食生活に関する適切な情報を収集整理し、市民等に迅速かつ的確に提供するよう努めること。
(2) 市民等の活動に対し、安全で安心な食生活が担保されるよう支援に努めること。
(3) 市長は、市民の健康保持や自然環境の保全を著しく損なう事態が生じたと判断した場合にあっては、当該市民等の活動について、関係法令等に基づき、関係機関と協議の上、適切な改善が図られるよう努めること。
2 市民等は、基本理念に基づき、安全安心な食生活に関する情報入手に努めるとともに、衛生の保持等安全安心な食生活の環境づくりに努めるものとする。
第4章 推進体制
(設置)
第14条 市長は、本条例による食育のまちづくりを推進するため、出雲市食育のまちづくり推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。
(所掌事務)
第15条 推進会議は、次に掲げる事務を所掌する。
(1) 市の食育のまちづくり推進計画を作成し、その実施を推進すること。
(2) 前号に掲げるもののほか、広く食育のまちづくりについて審議し、関連する施策の実施を推進すること。
(組織)
第16条 推進会議は、委員20人以内をもって組織する。
2 委員は、次に掲げる者の中から市長が委嘱する。
(1) 市民
(2) 識見を有する者
(3) 関係団体等の代表
(4) 行政機関の代表
(任期)
第17条 委員の任期は2年とする。ただし、再任を妨げない。
2 補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長及び副会長)
第18条 推進会議に、会長及び副会長を置き、委員の互選により選出する。
2 会長は、会務を総理し、推進会議を代表する。
3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、その職務を代理する。
(会議)
第19条 推進会議の会議は、会長が招集し、その議長となる。
2 推進会議は、委員の半数以上が出席しなければ会議を開くことができない。
3 推進会議の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(専門委員)
第20条 専門の事項を調査するため必要があるときは、推進会議に専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、市長が委嘱する。
3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。
(庶務)
第21条 推進会議の庶務は、健康福祉部健康増進課において処理する。
第5章 雑則
(委任)
第22条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。
附 則(平成18年3月17日条例第40号)抄
(施行期日)
1 この条例は、平成18年4月1日から施行する。
附 則(平成22年3月24日条例第13号)
この条例は、平成22年4月1日から施行する。
附 則(平成22年6月28日条例第26号)
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の際、現に出雲市食育のまちづくり推進会議の委員の職にある者は、この条例の施行日に、改正後の第16条第2項の規定により出雲市食育のまちづくり推進会議の委員を委嘱されたものとみなす。この場合において、その委嘱されたとみなされる委員の任期は、改正後の第17条第1項の規定にかかわらず、平成24年3月31日までとする。
3 この条例の施行後最初に開く会議は、改正後の第19条第1項の規定にかかわらず、市長が招集する。