○21世紀出雲神話観光大国の建設促進条例
(平成17年出雲市条例第355号)

前文
 出雲市は、「古事記」「日本書紀」「出雲国風土記」などに記されているごとく、数多くの神話・伝説がいにしえより綿々と語り継がれる「神々のふるさと」であり、「日本の心のふるさと」である。
 また、出雲市は、大いなる清流斐伊川、神戸川に抱かれ、東に宍道湖、西に神西湖を望み、リアス式海岸美を誇る国立公園の一角日御碕をはじめ、四季を彩る渓谷美の山陰の耶馬渓・立久恵峡など春夏秋冬、水と緑の美しい壮大な景観が織り成す山紫水明な地である。
 さらに、出雲市は、西谷墳墓群など古代弥生出雲の文化遺産に端を発し、いにしえより、全国津々浦々民衆の崇敬を集めてきた出雲大社(いずもおおやしろ)をはじめ、日御碕神社、須佐神社、長浜神社、鰐淵寺、一畑薬師、大寺薬師など全国屈指の歴史文化資源に恵まれている。
 こうした中、本市は、歌舞伎の始祖出雲阿國の生誕の地として、歌舞伎はもとより、能、神楽、太鼓、民謡、盆踊り等伝統文化とともに茶道、華道、書道、民芸、管弦、詩歌等生活文化万般の花が咲き、加えて、近年は、合唱、吹奏楽、ミュージカル、若者の現代音楽からオーケストラ、オペラへと音楽文化の拠点性が高まり、今や、本物志向と住民参加を標榜する「出雲総合芸術文化祭」、「出雲全日本大学選抜駅伝大会」、アイルランド―サッカー交流や「出雲科学館」等の活動が定着するに伴い、芸術文化とスポーツ、科学のまちづくりが新たな観光戦略となりつつある。
 本市がその自然資源や歴史文化資源、さらには、芸術文化、スポーツ、科学の交流活動により市内外はもとより、全国各地、さらに世界を結ぶ交流の拡大を図ることは、経済・文化・教育・福祉等にわたり波及効果が大きく、今や、観光政策こそ21世紀出雲の活力の源泉であり、島根、ひいては我が国の持続的な安定・発展の道と考える。
 このため、ここに、出雲市民の総意をもって、21世紀出雲の観光振興の基本的な考え方と方向性を明らかにすることにより、全市民の協力と参画のもと「神話の夢舞台 出雲」の創造を合言葉に、「21世紀出雲神話観光大国」の建設に向けて力強く前進することを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、前文に掲げるとおり、「日本の心のふるさと」出雲市がその美しい自然資源と歴史文化資源の上に「21世紀出雲神話観光大国」の建設を目指し、観光振興の基本方針並びに市、市民及び観光関係団体・事業者それぞれの役割・活動の方向性を定め、出雲市の経済・社会・教育・文化・福祉等の持続的な発展に寄与することを目的とする。
(基本方針)
第2条 出雲市の観光振興は、市、市民及び観光関係団体・事業者がそれぞれの責務又は役割を担い、相互の連携・協力により、次に掲げる事項を推進していくことを基本方針とする。
(1) 出雲の豊かな自然資源の保護と活用による水と森の空間整備と美しい景観の保全及び生活環境の美化促進による観光地づくり
(2) 古代出雲文化遺産及び伝統芸術・文化の発掘・保護・継承・創造を図るとともに積極的な利活用による出雲の顔づくり
(3) 文化・芸術・スポーツ・科学の振興を図り、各種イベントの開催、コンベンションの誘致等により、積極的に誘客を図り、交流人口の拡大・1,000万人の達成を目指すこと
(4) 食品・食材等特産品の開発、生産、流通の促進と地場産業の強化を図り、地産地消の拡大を期すること
(5) 交通基盤、観光施設等の整備促進を図り、全県を展望する出雲の國の縁結び神話観光ネットワークの定着・発展を図ること
(6) 市内外はもとより、全国各地、世界に向けた出雲の國ブランドの開発・確立に努めるとともに、観光大使をはじめ官民一体となって観光情報の積極的な発信に取り組み、観光客の誘致を促進すること
(7) 観光ボランティア等の育成やサービス体制の確保・充実を図るとともに、人にやさしい観光地づくりを目指し、快適なサービスの提供とおもてなしの心の醸成に努めること
(8) 学校教育や生涯学習において、出雲古来の歴史文化、神話等の学習・教育活動の充実を図り、市民の神話観光大国出雲への理解と愛着の高揚を図ること
(市の責務)
第3条 市は、前条に定める基本方針に則り、市民及び観光関係団体・事業者の協力のもとに、観光振興に関する施策を推進するものとする。
2 市は、市民及び観光関係団体・事業者が、本市の観光振興に関する共通の目標と認識のもとに、相互に緊密に連携・協力できるよう総合調整を図るものとする。
3 市は、市民及び観光関係団体・事業者の観光振興に関する意識の高揚と各種観光事業への取組みを促進するため、学校教育・生涯学習活動の増進とともに、広報、啓発及び情報の提供に努めるものとする。
4 市は、本市の観光振興に関する調査を実施し、その結果の公表に努めるものとする。
(市民の役割)
第4条 市民は、第2条の基本方針に則り、出雲神話観光大国に対する理解と関心を深めるとともに、観光事業の振興への取組みに積極的に参画するものとする。
2 市民は、快適なサービスの提供とおもてなしの心を持って出雲神話観光大国の創造に積極的に取り組むものとする。
(観光関係団体・事業者の役割)
第5条 観光関係団体・事業者は、第2条の基本方針に則り、業界及び業種の枠を超えて連携・協力を図り、その事業活動を通じて快適な環境とサービスの提供に努め、市内外の観光客の満足度の向上に努めるものとする。
2 観光関係団体・事業者は、自らが担うべき役割や事業目的を認識し、観光情報の発信、観光客の誘致、受入態勢の整備等に積極的に取り組むものとする。
3 観光関係団体・事業者は、市が実施する観光振興に関する施策に協働のパートナーとして積極的に参加、協力するとともに、自らの施策の充実・発展に努めるものとする。
(財政上の措置)
第6条 市は、観光振興に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を積極的に講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。